曲がり角からこじはる

シンセサイザー、こじはるの話

水野さんの話

水野さんの話。

 スタジオ観覧とはいえ場所は某マンションのリビングで、テーブルを挟んで対談する傍らで椅子に座って聞くという形。
 目の前にはいきもがかりのリーダー。来週末には紅白のステージに立っている筈の人。

 一人で聴くことが出来て、時空をも超えることが出来る"音源"に感じた可能性。
 一人一人に届けたくて書いた歌が"国民的"や"老若男女"、"結婚式ソング"といった、自身への評価として使われるワードによって社会的な意味を持ってしまうことへの葛藤。昨今のライブ回帰の流れによって、音楽がその場限りのものになってしまうことへの違和感。

 彼らが歌うのは社会に吹く風(=歌謡曲)ではなくて、その中に生きる個人(=JPOP)。個人ではなく社会を歌うようになってしまったらもう音楽をやる意味は無い、と言い切ったのが印象的でした。

 音楽業界に於ける自らの立ち位置を良く理解した上で、全体を俯瞰しながらもクリティカルな意見を述べる水野さんはイメージ通りの非常に聡明な方で、音楽配信やレコ大問題、楽曲そのものよりもキャラクターが先行するAKBやEXILEなどなど、シビアな話題については相当言葉を選びながら答えている様子でした。

 様々な悩みを抱えながらも、それでもいきものがかりが持つ可能性を何より信じている、とのこと。

 CDバブルの後、JPOPは終わったと言われ始めた頃に登場した最後の国民的歌手と言われるいきものがかりは、JPOPの延命措置に過ぎないのか、それともその先に何か新しいものが生まれるのか・・・

興味深い内容でした。
 普段、作品そのものより作った人のほうに興味を持ってしまうので、こうした機会が得られて大変有意義な一日でした。

 おまけに、たまたま前日に買って読んでいた「ヒットの崩壊」の著者 柴那典さんが自分の後ろに座っていてびっくりしました。
 
 水野さんの自著、「いきものがたり」も読み応えあるので是非。